東京ドキュメンタリー映画祭2018
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上映作品

特集3エチオピアの芸能・音楽・馮依儀礼 川瀬慈特集

12月3日(火)16:15〜上映

エチオピア高原を移動しながら軒先で唄い、乞い、見返りに祝詞を与える唄い手を追った『ラリベロッチ』。弦楽器マシンコを弾き語るアズマリの少年少女の姿を数年ごとに記録し、音楽職能を生きる人間の営みと葛藤を描いた『僕らの時代は』。中東から東アフリカに広がる憑依儀礼ザールにおける、人間と精霊の交感を荒々しく映しだす『精霊の馬』。気鋭の映像人類学者による珠玉の短篇集。

  • ラリベロッチ—終わりなき祝福を生きる—
  • ラリベロッチ—終わりなき祝福を生きる— 上映時間30分

    エチオピア高原北部を広範に移動する“ラリベロッチ”と呼ばれる唄い手たち。彼らは早朝に家の軒先で唄い、乞い、金や食物を受け取ると、その見返りとして人々に祝詞を与え、次の家へと去っていく。ラリベロッチは、唄うことを止めるとコマタ(アムハラ語でハンセン氏病の意)を患うという差別的な言説のもと、謎に満ちた集団として人々のあいだで語られてきた。本作は、ラリベロッチの老夫妻が、北部の古都ゴンダールにおいて行った活動の記録である。ラリベロッチは、近所の住人たちに家々の主の名前、宗教、職業等の情報をあらかじめ収集し、歌詞の内容へと反映させていく。そして金品を受け取ると、祝福の台詞をその人物や家族へ捧げ、次の家へと移動する。ラリベロッチに対する人々の反応は一様ではない。そこからは、親しみ、侮蔑、羞恥など人々の様々な感情が伺える。ラリベロッチ側も、たとえ人々に拒絶されても決してひるまず、絶妙なジョークによってその活動を正当化しつつ、人々の彼らに対する好意的な反応から邪険な対応にいたるまでユーモラスに歌にとりこんでゆく。エチオピアのストリートにおいて、芸能を生み出す根源的な力に迫る。

    2005年/30分

  • 僕らの時代は 上映時間43分

    弦楽器マシンコを弾き語るアズマリ(自称“ザタ”)は、エチオピア北部の地域社会において古くから音楽をなりわいにしてきた職能集団である。『僕らの時代は』は、アズマリの少年少女が歩む人生の道程を、映像によって数年ごとに記録してゆくプロジェクトである。本作ではアズマリの少年、タガブとイタイアに焦点をあてた。音楽職能を生きる二人の日々の営みや葛藤とともに、アズマリ集団内部における彼らと大人たちとのなわばり争い等を、撮影者と二人のアズマリ隠語による会話を中心とするやりとりから描く。

    2006年/43分

  • 精霊の馬 上映時間28分

    "精霊の馬"とは、エチオピアのザール憑依儀礼の霊媒を意味する。ザールは、中東から東アフリカにかけて広く伝わる。特にゴンダールは、古くからザールが盛んであり、ミシェル・レリスの著書『幻のアフリカ』における描写がよく知られる。人々は精霊(コレ)を呼び寄せ、病気や争い等、個々人が抱える問題に関して助言を求める。また、北部のマジョリティが信仰するエチオピア正教会の祝祭儀礼の折にもザールが開催される。本作では、ゴンダールの著名な精霊の馬、マレム・ムハメッド氏を介してなされる、人々と精霊の交感、交流を軸に、当儀礼に人々がもとめる世界を描く。

    2012年/28分

監督プロフィール

  • 川瀬慈
  • 川瀬慈
    1977年岐阜県生まれ。映像人類学者。国立民族学博物館/総合研究大学院大学准教授。 エチオピアの楽師、吟遊詩人の人類学研究、民族誌映画制作に取り組む。同時に人類学、シネマ、アートの交差点から創造的な叙述と語りを探求する。近年は客員教授としてハンブルグ大学、ブレーメン大学、山東大学、アジスアベバ大学等で映像人類学の理論と実践について教鞭をとる。近著『ストリートの精霊たち』(世界思想社、2018)が第6回鉄犬ヘテロトピア文学賞を受賞。
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