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上映作品
短編5戦時下の異邦人
12月15日(水)10:00〜上映
戦前、墜落死という最期を迎えた朝鮮人女性民間パイロットの生を韓国人女子大学生が辿った『日本で夢見た女性パイロット』。「特攻の地・知覧」の片隅に建つ、かつての敵国兵士を悼む慰霊碑を巡る物語を追う『秘話』。『夜は隠す/Missing』は戦中期の蜂起事件や今日の労働者を闇という視点から連ねて描いたシネ・エッセイだ。
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作品1
日本で夢見た女性パイロット~朴敬元の生涯~ 上映時間28分
東京都立川市。戦前、この場所には日本飛行学校立川分校があった。数々の民間パイロットの中に一人の朝鮮人女性がいた。彼女の名は朴敬元。1925年、パイロットの夢を叶えるために来日。厳しい訓練を乗り越え、「日本ー朝鮮ー満州」記念飛行のパイロットに選ばれる。しかし、飛行当日は暴風雨となり行方不明に。墜落場所は、静岡県熱海市玄岳の山中だった。墜落死という最後を迎えた彼女の一生を、韓国人女子大学生が辿った。2021年/28分
監督のことば
作品を制作した時期、日韓関係は戦後最悪と言われていました。そのため、自分の母国でもある韓国での取材は困難でした。それでも諦めなかったのは、主人公・朴さんの人生に、日本で育ってきた自分の人生を重ねていたからです。毎年のように変わる両国の関係に左右され、後世に伝わることなく、消えていく歴史があるのではないかと思います。この作品を通して、政治問題だけでなく地域に埋もれた繋がりにも目を向けて欲しいです。監督プロフィール
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李有斌
1998年、韓国馬山生まれ。7歳から、両親の仕事の関係で日本在住。中央大学商学部在学中に本作品を制作。現在は、テレビ局のディレクターとして働いている。
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作品2
秘話 ~「知覧」にある米兵慰霊碑~ 上映時間30分
鹿児島県知覧町。陸軍の全特攻戦死者1036人のうち439人もの隊員がここから出撃し亡くなった。戦後、隊員の遺書・遺品などが展示された知覧特攻平和会館には、全国から見学者が訪れる。そんな「特攻の地・知覧」の片隅に、B25爆撃機搭乗員慰霊碑が建つ。建立されたのは終戦から70年後の2015年。なぜこの場所に、かつての敵国兵士を悼む慰霊碑があるのか。関係者への取材を通し、慰霊碑の背景にある物語を記録した。2021年/30分
監督のことば
在籍していたゼミでは、日本全国にある米兵慰霊碑の調査を行ってきた。これまでに国内35ヶ所以上で確認できたが、中には撤去された物もある。その一因は建立経緯が記録として残されていないからではないだろうか。知覧においても、碑の存在は地元住民にもあまり知られていない。慰霊碑は背景にある物語と併せて記録することで、はじめて「語り部」としての役目を果たすのではないかとの想いで、資料収集・関係者取材を行った。監督プロフィール
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佐藤仁紀
1998年マレーシア生まれ。母が中華系マレーシア人。大学はジャーナリズム専攻。太平洋戦争・ベトナム戦争などを題材にルポルタージュ執筆やドキュメンタリー制作を行った。本作品は在学中に制作。現在は静岡県で記者として働いている。担当は事件・事故。
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作品3
夜は隠す/Missing 上映時間28分
本作は終戦間近の1945年6月30日に、秋田県花岡町(現大館市)で起きた花岡事件に基づいている。過酷な労働や虐待に耐えかねた中国人労働者が一斉に蜂起したことで知られる事件である。現地で重ねた取材を基に花岡町の複雑な歴史性、土地の記憶を、作家によって設定された複数の時代、架空の人物による語りによって複層的に呼び起こすことを試みている。2020年/28分
監督のことば
はじめこの事件を知った時、作品にしたいという思いのまま現地である花岡町に向かった僕は困ってしまいました。当時の事件の記憶を留める遺構がほとんど残っておらず、どこにカメラを向ければ良いかわからなかったからです。しかし取材を続けていくうちに今は残っていない当時の遺構に成り代わってまた別の営みが行われていることに気づきました。かつて中国人の拷問が行われた場所は町民が利用する体育館に、死体が埋められた鉱滓ダムは工場のゴミ処理場に。そこで過去の痕跡を追うのではなく、今を写し取ることで不可視の領域に踏み込んでいこうという発想からこの作品は生まれました。監督プロフィール
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吉田真也
青森県生まれ、広島県在住。東京藝術大学大学院映像科卒業。歴史的な事件や個人の記憶を複数の視点によって立ち上げていく映像インスタレーションを展開。主な展覧会に、札幌国際芸術祭 2020「Of Roots and Clouds ここで生きようとする」、国際交流基金(JF)主催 オンライン展覧会「距離をめぐる11の物語:日本の現代美術」などがある。