草原が幾重にも重なり、赤褐色の牛たちがのんびりと草を食む。ここは阿蘇連山を南に遠望する熊本・産山(うぶやま)村。信号機もコンビニもない小さな村に“あか牛の神様”といわれる牛飼いがいる。井 信行さん(86)は、結核を患った父に代わり中学卒業と同時に就農。「牛は草で育つのが本来の姿」を信念に、牛と人と草原がつながる循環の形を守り続けてきた。しかし年々あか牛は減り、村は過疎が進み、“がまだしもん”だった妻も亡くなった。それでも変わらぬ村への想いを抱く信行さんと、偉大な背中を見てきた息子・雅信さん。親子の日々を見つめた。
◎舞台挨拶
