クルグズ(キルギス)の山岳地帯にある小さな村コクタシュ。家事や育児を堅実にこなし、夫婦、嫁姑関係に折り合いをつけながら生きている主婦たちの楽しみは、なんとサッカー。村の女性ガジの発案でトーナメント戦が開催される。思う存分体を動かし、ゲームを楽しむ女性たちの生き生きとした表情が、雄大な自然をバックに、日常生活と共に描かれる。
人類学・民俗映像F
ルワンダのトゥワの家族に突如起きた喧嘩が、やがて収束し、皆で踊り出すまでのリズムをワンカットで記録した『ドッグ・シット・フード』。『ブズカシ ―男の地のアティルキュル―』はクルグズ(キルギス)の男たちが、頭を落としたヤギの胴体を馬上で奪い合う伝統遊戯。その背後にある、馬の飼育から生活のサポートまで、様々な局面で活躍する女性の存在にカメラは注目する。
人類学・民俗映像E
中国・雲南省、ミャンマー国境近くにある少数民族ワ族の集落、翁丁(オミダン)。「中国最後の伝統集落」と呼ばれ、6代目の村長、楊艾那(ヤン・アイナ)のもと、藁葺き屋根の家で暖炉を囲む穏やかな生活を300年近く守ってきた。しかし2012年、政府の「貧困削減重点政策」が始まると、地元の観光会社は開発のため、住民の移住を促進する。楊艾那は反対し、断水や停電、脅迫にも屈さず抵抗を続けたが、ある日、壊滅的な火災が発生する。失われゆく村の暮らしを記録しながら、原始社会から社会主義への移行を寓話的に描く。
人類学・民俗映像D
「コロストラム」とは出産後に最初に出る乳のこと。
スイスアルプスで酪農家を営む47歳のパスカルは、父と、最近兄も亡くし、ひとりで毎日約30頭の牛の乳を搾り、谷間の酪農会社に牛乳を売り暮らしている。そんな彼のもとに、夏の間、ボランティアとしてやってきたのは、都会に住む31歳のソレーヌだ。パスカルの酪農家としての過酷な日々を体験した彼女だったが、やがて二人は違いを乗り越え、共に働きながら、互いを知り、心を開き、思いがけない絆を育んでいく。
人類学・民俗映像C
タイ北部の少数山岳民族・モン族のシャーマン、ジーネーンが日常生活と憑依を行き来するさまを、マルチカメラとモノローグで省察する『アット・ザ・ドアウェイ』。『ムル族の犠牲祭』は、バングラディシュ・チッタゴン近郊の丘陵地に暮らすムル族の儀式にカメラが密着。村の暮らしと牛を神に捧げる様子がよくわかる好編。
人類学・民俗映像B
ケニアで約20年に一度行われる、マサイ族の成人戦士への通過儀礼「エノウト」と、カナダ・アルバータ州で行われる、ネイティブアメリカンの伝統的な祭り「パウワウ」をそれぞれ記録した作品。儀礼に挑む若者の繊細な表情や、祭り自体が持つエネルギーをとらえた多様で迫力あるカメラワークは、スクリーンに映えること間違いなし。
人類学・民俗映像A
カーボヴェルデ北西部のサンヴィセンテ島。カルロスはアルコールと薬物依存に翻弄されながら日々を生きている。その歩みの背後に絶えず響いているのが、カーボヴェルデに深く根ざした感情「ソダーデ」である。単なる郷愁を超え、奴隷制の時代から音楽を通して受け継がれてきたソダーデは、いまも人びとの記憶に息づいている。カルロスの声と記憶、そして音の風景をとらえることで、この民族誌映画はソダーデの一端を映し出す──それは個人の悲しみであると同時に、歴史が響かせる共鳴でもある。
