東京ドキュメンタリー映画祭2021

上映作品

短編異文化で暮らす

3月6日(日)14:10〜上映

東京の朝鮮学校の学芸会に密着し、アイデンティティの問題に迫る『日本の中の小さな異国』。旧ユーゴ出身の不法移民が入管局による収容を経て、人々の助けを受ける『彷徨』。岐阜県の工場で派遣切りにあったブラジル人一家に、次々と試練が襲いかかる『ブラジル ノ ニッポン』。日本という異文化を生きる人達を撮った3本。

◎舞台挨拶
▶︎3/6(日)14:10の回 上映後
 登壇:藏岡登志美監督(『日本の中の小さな異国』)
 オンライン登壇:岩崎祐監督(『彷徨』)
 ビデオメッセージ:若尾泰之監督(『ブラジル ノ ニッポン   ~ある家族の記録~』)

  • 日本の中の小さな異国
    日本の中の小さな異国
  • 作品1

    日本の中の小さな異国 上映時間20分

    ルーツを韓国、北朝鮮に持つ子供たちが通う朝鮮小学校を、初めて許可を得て日本人監督の目線で撮影したドキュメンタリー作品。今だ反日教育を行っている等の噂が囁かれている校内での様子は私たちの予想を覆すほどに穏やかで、温かい。人数の少ない生徒に寄り添う教師、父兄、地元の人々。現代の日本の学校教育のありかたを考え直すと同時に「民族教育とは何か?」に迫る。私たちの国の中にある小さな、すこし懐かしい異文化を覗く作品。

    2020年/20分

監督のことば

この映画は今の日本で微妙な立場にいる、在日問題を扱った内容と思われるかもしれない。確かに、いくつかのシーンにそのようなメッセージが込められている。しかし、私自身、撮影編集を通して感じたのが、韓国的でも朝鮮的でも日本的でもなく、在日である、「彼らの」独特の優しく繊細な世界。文章や想像のみで何かを判断したり知った気になることが多い昨今、時間をかけ、見つめ、共に考えていくことのほうが、私は大切だと思う。

監督プロフィール

  • 藏岡登志美
  • 藏岡登志美
    2004年より撮影編集を学ぶ。2011年、山梨県富士吉田市で「平成富士吉田の胎動」を制作。その後も様々な作品を制作。現在は野生動物が起こす被害を調査する業務を行いながら、映像制作を続けている。
  • 作品2

    彷徨 上映時間28分

    旧ユーゴスラビア出身のフローリムは、戦争と民族浄化を生き延びた末、20年前に来日し、母国の消滅に伴い無国籍となった。最初の10年近くを刑務所と入管収容所で過ごし、その後の10年を、帰る国もなく、就労許可を得られない仮放免の立場で生きてきた。外国人向けの無料健康診断や恩人たちの元を訪れる彼は、来日20年の節目にこそビザを得られないかと一縷の希みを抱きながら、コロナ禍「前夜」の東京の街を歩く。

    2021年/28分

監督のことば

外国にルーツをもつ人々のドキュメンタリーを作ってきた私がフローリムさんと出会ったのは2019年夏、無国籍者を支援するNPOの催しでのことだった。母国が消滅したために無国籍となり帰れなくなったという彼の半生には、多民族国家で民族浄化に巻き込まれた悲劇や来日に至る複雑な事情など劇的なエピソードが多い。しかし、この小品で彼を記録することの目的は、闇に包まれた彼の過去の解明でも日本の厳しい移民政策に対する批判でもなかった。私が試みたのは、制度に排除されて行き場を失った一人の人間と肩を並べて歩き、こぼれ落ちる言葉を拾い、「自分はゼロ」だと言う彼の存在をただ見つめることだった。

監督プロフィール

  • 岩崎祐
  • 岩崎祐
    映像作家。東京で暮らすエチオピア人難民申請者の奮闘を記録した「かぞくの証明」(2019)がドイツ・ニッポン・コネクション、ヴィジョン・デュ・レール・メディア・ライブラリに選出、東京ドキュメンタリー映画祭短編部門観客賞受賞。監督したビデオダンス「nai-mono-gatari」(2011)がDMJ国際ダンス映画祭など国内外で上映。東京生まれ。メリーランド大学カレッジパーク校英文学科卒。
  • 作品3

    ブラジル ノ ニッポン~ある家族の記録~ 上映時間47分

    岐阜県美濃加茂市には、工場などで働きながら暮らすブラジル人が2,500人いる。アラマキ一家5人は8年前にブラジルからこの町にやって来た。両親と一男二女の子供たち。長男のカイオは、定時制高校に通いながら工場で働く地道な生活だ。一家は永く住もうとローンで家も買い、仲間たちとも楽しく過ごすはずだった。しかし言葉の壁や教育問題に加えて、リーマンショック、東日本大震災などによる日本経済の落ち込みで、一家の暮らしにも思わぬ変化が起こっていく。

    2021年 短編部門 観客賞

    2020年/47分

監督のことば

この作品に登場する家族は日本に住むごくありふれたブラジル人一家です。 この家族を一年余撮影する中で、彼らは様々な問題にぶつかります。この問題は多くの在日外国人達に共通する問題なのかも知れません。2014年頃長編の「ブラジル ノ ニッポン」として完成し、自主上映会等で数ヶ所開催しただけでしたが、入管法が改正された今、再び考えなければならない問題と思い、より多くの方に観て頂けるよう47分に再編集しました。

監督プロフィール

  • 若尾泰之
  • 若尾泰之
    1966年岐阜県生まれ。東京の大手映像技術会社に映像カメラマンとして従事した後、フリーに。 テレビ番組や企業プロモーション等の仕事をカメラマンで請け負う傍ら、ドキュメンタリーの自主制作に取り組む。過去に「昭和八十四年~1億3千万分の1の覚え書き」を企画、撮影している。
  • 芸術文化振興基金
  • エトノスシネマ
  • アジアンドキュメンタリーズ