東京ドキュメンタリー映画祭2021
東京ドキュメンタリー映画祭上映作品 > アート/ドキュメンタリー

上映作品

短編アート/ドキュメンタリー

3月9日(水)16:35〜上映

瀬戸内の火の祭から想起する人間の原始、山道を歩く老人の背中を追うワンショットのカメラ、パンデミックで航路を失った人々を導く羅針盤。異国で30歳を前に揺らぐアイデンティティ、激動の2020年に自己を見つめる私と家族の唄、朽ちた場所から匂う往時の気配。日本のみならずアジア各国から届いた、独自の作風が際立つ作品の数々。

◎舞台挨拶
▶︎3/9(水)16:35の回 上映後
 登壇:ジョイス・ラム監督(『食火』)
 オンライン登壇:村岡由梨監督(『透明な私』)、ジン・ジャン監督(『ワン・デイ』)

  • ラ・ブソル La Boussole
    ラ・ブソル La Boussole
  • 作品1

    ラ・ブソル La Boussole 上映時間8分

    “方位なき方位”に針路をとる航海。2020年早春、COVID-19によるロックダウン寸前のパリで発表した映像ライブ作品のシングル・スクリーン版。

    2021年/8分

監督のことば

LE CUBEという老舗のデジタル創作センターで、滞在制作する機会が昨春にあったのだが、もう遠い記憶だ。世界はこのまま変わり果て、元に戻らないのだろうか?

監督プロフィール

  • 七里圭
  • 七里圭
    映画監督。最近は早稲田の村上春樹ライブラリーの映像を制作。吉増剛造×空間現代のライブ・ドキュメンタリーも仕上げ中。
  • 作品2

    食火 上映時間11分

    「とんど焼き」は一年の無病息災を祈るために、瀬戸内海に浮かぶ大三島で毎年行われている行事である。古くから「神の島」として長らく漁業が禁忌とされ、農耕で生きてきた大三島で、村の人びとは協力し合いながら、高さ約8メートル、幅約3メートルのとんどを作り、全員で空き地まで引いたあとに火を放つ。火を起こし、火を囲み、そして火を食べる——火にまつわる人の営みからその場所の歴史、人間の根源的な習性を思索する。

    2020年/11分

監督のことば

大三島は仕事で2015年から通った島です。大三島には13の集落があり、島内の繋がりよりも対岸からの影響が強く、各集落に独自の文化が形成されてきました。私は各集落の祭に強く惹かれ、退職後も映像を撮り続けました。「食べる」ことによって私たちは神様と繋がれるのか。音楽は実際に大三島の環境音も取り入れた石田多朗さんによるピアノ曲。島で出会った人々と風景を思い出させてくれるような、優しくてたくましい曲です。

監督プロフィール

  • ジョイス・ラム
  • ジョイス・ラム
    香港出身、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻在籍。ドキュメンタリーを通して家族の定義を捉える。主な作品に『家族に関する考察のトリロジー』『新異家族』。アートブックや雑誌、書籍の編集者としても活動。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院日本語・経済学科、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
  • 作品3

    透明な私 上映時間11分

    2020年、世界中が「変化」を余儀なくされた年に、自分の中で変わったもの、変わらないものを確かめたくて書いた詩「透明な私」を元に制作。私が着けた白いマスクは、私のこれまでを写すスクリーンになった。統合失調症を患う私を、時に苦しみ傷つきながら支えてくれる家族。野々歩・由梨・眠・花。「自分とは何者なのか」その答えを探しながら私たち4人は、今日を懸命に生きていく。

    2020年/11分

監督のことば

私自身、ナレーションの入った映像作品を作るのは初めてで、言葉が映像を邪魔してしまうのではないか、など、完成当初は、この作品が国内外の観客の皆さんにどう受け止められるのかとても不安でした。しかしそれはひとまず杞憂に終わったようです。「自分の家族」という極めて個人的なテーマを描いた作品であるにも関わらず、人が人と繋がって生きていく上で普遍的で大切な何か、を孕んでいる作品であるからだと思い至りました。

監督プロフィール

  • 村岡由梨
  • 村岡由梨
    1981年東京生まれ。日本女子大学附属高等学校中途退学、イメージフォーラム付属映像研究所卒業。一貫して「セルフポートレート」にこだわった自作自演の映像・写真作品などを制作、出演・美術・撮影などのほとんどを自ら行う。統合失調症の治療に伴い2009年より作家活動を休止、2016年本格的に再開。2児の母。
  • 作品4

    不在の存在 上映時間12分

    湖に浮かぶ花、朽ちた団地、建立中の墓。一切の説明を排して、固定されたカメラが、その場所に、もういない誰かの存在の気配を映し出す。本作は2020年の12月に、滋賀県の琵琶湖、岐阜県の南頬団地(みなみのかわだんち)、愛知県の八事霊園などで撮影された。現在、南頬団地は解体されて、もう存在しない。厳格な構図で切り取られた世界に、その時にしかないドキュメンタリーの偶然性が立ち現れる時間。

    2021年/12分

監督のことば

もういない人たちの存在の気配を映し出そうとしました。 透明な視点で撮影したくて、本作品は撮影者の存在を感じさせないように全編フィックスで撮影しました。 撮影場所には、土地の持つ力が信じられる場所を選択しました。 何か神聖なものが宿っているような印象を受けたり、長い時間の蓄積が感じられる強度のある場所です。

監督プロフィール

  • 山川智輝
  • 山川智輝
    岐阜県出身。『瓜二つ』が19th CHOFU SHORT FILM COMPETITIONグランプリと第20回水戸短編映像祭コンペティション部門準グランプリ、『Blue/Orange』が第22回長岡インディーズムービーコンペティション奨励賞受賞。『ニヒル』が仙台短篇映画祭「新しい才能に出会う」選出。
  • 作品5

    ワン・デイ 上映時間24分

    霧掛かった中国の山道を歩く、一人の老人の跡を追うワンショットのカメラ。その肩には米袋や材木、時には水の入った大きなバケツが下げられている。やがて季節は憂鬱な冬を越え、春を迎える...。 ダイアログと音楽、色彩まで排した清々しいまでに広がる画面から聞こえてくるのは、風音と足音、そして鳥の声のみ。一体この老人がどこへ向かいどのような生活をしているのか。それはこの旅路の最後に、少しだけ知ることが出来る。

    2021年 短編部門 奨励賞

    2020年/24分

監督のことば

一度映画の種が蒔かれたら、後はただひたすらじっと待ちます。それはやがて芽を出し枝を成し、高くそびえ葉をつけます。しかし来たる風雪の中で実を結ぶ「その日(One Day)」まで、確かなことは何ひとつわからないのです。

監督プロフィール

  • ジン・ジャン
  • ジン・ジャン
    1989年洛陽市生まれ。初長編『Shang’ajia』はTIDF、本作『ワン・デイ』はIDFAやトレント映画祭、DaFilms、次作『The Broken Ridge』はDMZ国際ドキュメンタリー映画祭で上映。また最新作『Republic』はDMZ Industry Awardより3つの賞を受賞。
  • 作品6

    30歳の旅At the Age of… 上映時間47分

    『30歳、何をしましたか?』海を渡り日本に来た作者が、30歳を迎える年に映画制作を初めて試みる。周囲の人々に30歳になった当時の心情を訪ね、記憶を辿ってゆく極私的な映像と声の旅路。

    2020年/47分

監督のことば

ドキュメンタリーに関する仕事に携わった数年間後、日本に滞在している期間に初めて映画を制作してみました。「記憶と記録」というテーマに興味があり、音と映像の関連性を模索しながら作った作品です。個人的に日々刺激をもらったこの年のことを、映像を通じて心静かに描きたいと思いました。

監督プロフィール

  • ジン・ジャン
  • ヨハン・ジャン
    1990年台湾台南生まれ。イメージフォーラム映像研究所第43期、44期修了。短編映像の個人制作を行っている。
  • 芸術文化振興基金
  • エトノスシネマ
  • アジアンドキュメンタリーズ