東京ドキュメンタリー映画祭2021
東京ドキュメンタリー映画祭上映作品 > エスニシティの現在

上映作品

人類学エスニシティの現在

3月10日(木)14:20〜上映

伝統的な土葬の儀礼をおこない、古老から若者へ言語や文化が継承されるさまを記録した『アイヌプリ埋葬』。カレン族が暮らすタイの山村で伝統が失われ、観光化が進む現在を見つめる『風苗』。辺境地域にも押しよせる現代文明によって失われる伝統文化と、自らのエスニシティを守り、受け継ぐ人びとの姿を映しだす2作品。

◎舞台挨拶
▶︎3/10(木)14:20の回 上映後
 登壇:藤野知明監督(『アイヌプリ理葬・二〇一九・トエペツコタン』)、淺野由美子さん(『アイヌプリ理葬・二〇一九・トエペツコタン』制作)、白井樹監督(『風苗』)
 オンライン登壇:葛野次郎さん(『アイヌプリ理葬・二〇一九・トエペツコタン』出演)

  • アイヌプリ埋葬・二〇一九・トエペツコタン
    アイヌプリ埋葬・二〇一九・トエペツコタン
  • 作品1

    アイヌプリ埋葬・二〇一九・トエペツコタン 上映時間64分

    2019年、新ひだか町静内東別生まれのアイヌ女性、タナヨさんが88歳で亡くなった。その葬儀を従弟の葛野次雄さんは、現在ほぼ行われなくなったアイヌプリ(アイヌの伝統)に基づく方法でおこなった。家族・親戚、近隣に暮らすアイヌの人々が集まって供物や墓標(クワ)を作り、ゴザで死者をくるみ、副葬品とともに埋葬する。普段の儀式とは異なる所作があり、貴重な伝承が行われ、「生きた文化だ」という言葉がつぶやかれた。

    2021年 人類学・民俗映像部門 準グランプリ

    2021年/64分

監督のことば

葛野次雄さんとは、大学からアイヌの遺骨が返還された際の儀式の祭司をされた時に知遇を得ました。葛野さんの父、辰次郎さんはアイヌ語の祈りの言葉などを大学ノート100冊に残したエカシ(長老)であり、辰次郎さんが亡くなった時、次雄さんはアイヌプリで埋葬しています。アイヌが協力した映像記録が撮影者や研究者に帰属して、手元に残らないことに次雄さんは長年疑問を持ち、葬儀の記録を葛野家に残したいと依頼されて、引き受けました。

監督プロフィール

  • 藤野知明
  • 藤野知明
    1966年、札幌生まれ。長編ドキュメンタリー『とりもどす 囚われのアイヌ遺骨』(2019年)、『カムイチェㇷ゚ サケ漁と先住権』(2020年)を監督。淺野由美子と「動画工房ぞうしま」として、札幌を拠点に映像制作を行っている。先住民に対する人権侵害の歴史を知ったのは、日本映画学校の学生時代、千葉茂樹監督と出会ったのがきっかけでした。
  • 作品2

    風苗 上映時間46分

    多くの野生生物と人々を懐深く育んできたタイの最高峰、ドイ・インタノン。東ヒマラヤの果てに位置するこの山腹に棚田を拓いたカレン族の村で、アサックと家族の暮らしは大きな変化を経験していた。美しい景観を求めて訪れる観光客が増える中、村の若い世代は田畑を耕しながら、2012年以降SNSを駆使して「ホームステイ」の運営を始める。同時代を生きるこの村で、時とともに変わりゆくもの、そして変わらないものとは―。

    2021年 人類学・民俗映像部門 奨励賞

    2020年/46分

監督のことば

この映画は、2015年の出逢いから築いてきた人々/土地との関係を土台に、映像人類学プロジェクトとして2019年の2ヶ月半、生活を共にする中で生まれました。自分という存在と共に、同時に自分を超えて広がっていく風景。非人間と人間、村人と訪問者、撮る者と撮られる者といった図式を超えて、誰もが生きることの核に持っているような「風景を生きる」営みを見つめ、その意味を問い直す機会になることを願って。

監督プロフィール

  • 白井樹
  • 白井樹
    1988年生まれ。一橋大学で文化人類学を専攻時、インドのシッキム州に1年半留学しフィールドワーク。2015年以降、タイの最高峰ドイ・インタノンのカレン族の村に通い写真作品を制作。2019年にマンチェスター大学映像人類学修士課程修了後、映画『TEUGA(邦題:風苗)』を発表、複数の海外映画祭で上映。
  • 芸術文化振興基金
  • エトノスシネマ
  • アジアンドキュメンタリーズ