東京ドキュメンタリー映画祭2022
東京ドキュメンタリー映画祭上映作品 > シャーマンと芸能者(人類学短編集)

上映作品

人類学4シャーマンと芸能者(人類学短編集) 上映時間79分

12月13日(火)16:05 / 12月22日(木)14:15

エチオピアで弦楽器マシンコを弾き語るアズマリが、即興的な場をたちあげる様をワンショットで撮った『吟遊詩人』。タンザニアの村で、痙攣する病気になった子どもを呪術の力で治癒する『呪術師の治療』。ウズベキスタンのアニミズム的な交霊術と、イスラームが融合した儀礼を記録する『交霊とイスラーム』の最新作3本。



◎舞台挨拶
▶︎12/13(火)16:05の回 上映後
登壇:松永由佳監督、和崎聖日監督
▶︎12/22(木)14:15の回 上映後
登壇:川瀬慈監督

  • 吟遊詩人 -声の饗宴-
    吟遊詩人 -声の饗宴-
  • 作品1

    吟遊詩人 -声の饗宴- 上映時間17分

    エチオピアの都市にみられる吟遊詩人酒場“アズマリベット”。ここでは、弦楽器マシンコを弾き語る楽師アズマリが人生の無常や恋についての伝承歌を歌う。聴き手も即興的に詩を生み出し、頻繁に歌い手に投げかける。アズマリはそれらの詩を弦楽器の旋律にのせて一字一句復唱していく。アズマリの歌は、庶民の気持ちを代弁するのみならず、エチオピアの社会情勢を映し出す鏡であるといる。

    2022年/17分

監督のことば

本作は2022年6月のある晩、アジスアベバにおいて長回しのシングルショットによって記録された楽師ソロモン・アイヤノーと客たちの詩のやりとりです。ここで歌われた詩の内容はパンデミックからエチオピア国内の戦争、内政批判、さらにはダムの建設をめぐる外交摩擦などです。熱く生々しい庶民の声の饗宴に浸かってください。

監督プロフィール

  • 川瀬慈
  • 川瀬慈

    人類学者。国立民族学博物館准教授。詩、小説、映像作品、パフォーマンス等、既存の学問の枠組みにとらわれない創作活動を行う。制作した映像作品は、各国の主要な民族誌映画祭において入選してきた。主な作品に『Room 11, Ethiopia Hotel』、『僕らの時代は』、『ラリベロッチ-終わりなき祝福を生きる-』、『精霊の馬』などがある。

  • 作品2

    呪術師の治療 ータンザニア 上映時間25分

    タンザニア南東部の小さな村では、呪術を使った伝統医療が今も施されている。小学生のアミーナは痙攣(けいれん)や多動で苦しんでいた。アミーナの母親は子供の治療を求め、自宅から遠く離れたこの村までやってきた。病院では治療が困難とされる病に対し、呪術師は独自のアプローチで治療を行う。本作は、呪術師が1日がかりで薬を作る様子をカメラに収めた。

    2022年/25分

監督のことば

タンザニアでは病院の治療を受けつつ、そこで効果が得られなかったり治療方法がないとなった場合、呪術師のもとに行くことは少なくない。呪術というと魔法のようなものを想像するかもしれないが、複数の薬草を使って煎じて飲んだり、身体に塗り込むことが多い。呪術とは超自然的なものに働きかける技術とその知識であり、彼らの生活に根ざして存在していることが分かる。

監督プロフィール

  • 松永由佳
  • 松永由佳

    看護師。2013年より海外協力隊にて東アフリカ・タンザニアにて2年間活動。帰国後、熊本大学大学院社会文化科学研究科文化人類学専攻にて博士前期課程修了。研究論文は2019年一般社団法人アフリカ協会第四回懸賞論文佳作入賞。2021年東京ドキュメンタリー映画祭にて『呪術師の儀礼―タンザニア』を上映。

  • 作品3

    交霊とイスラーム:バフシの伝えるユーラシアの遺習 上映時間37分

    夏の陽光と土埃の中、太鼓の音と女性の叫び声、唸り声が一軒の民家から漏れ響く。舞台はウズベキスタンの旧遊牧民系住民の集落。ユーラシア大陸中央部の古層をなすシャマニズム的な交霊と、7世紀に伝来したイスラームの祈祷との融合のもと営まれる病気治療の遺習は、バフシ(女性の霊媒)によって今日まで伝えられている。この映画は、バフシの治療行為の様態と一族の歴史から、この地が経験してきたテュルク化とイスラーム化、ソヴィエト社会主義化、主権国家独立などの複雑な歴史を紐解き、現在の姿を活写する。

    2022年/37分

監督のことば

蝋燭に点けられた火、供犠獣の血、血塗られた太鼓の律動、人間界の外部に存在する精霊や祖霊への働きかけ、奇声、神(アッラー)の名の連祷。これらの際立つバフシによる治療行為の場には緊張感と迫力、神秘性が漂う。そして精霊と祖霊、神への呼びかけ自体に付された韻律と旋律は美しく心地いい。可視と不可視の調和。これこそ、バフシの治療行為が、科学万能とされたソヴィエト近代、その後の現代社会でも継続されている理由であり、本作をとおして私たちの感覚に訴えかけてくる「何か」の正体であるかもしれない。
(和崎聖日)

監督プロフィール

  • 和崎聖日、アドハム・アシーロフ
  • 和崎聖日、アドハム・アシーロフ

    和崎聖日(写真):
    1977年 広島県生まれ。中部大学教員。ペルシア文学史上最大の神秘主義詩人と目されるジャラールッディーン・ルーミー(1207-73)の詩に心を打たれ、スーフィズム(イスラーム神秘主義)研究の道を志す。2018年には民族誌映画“Guli Armug‘on: Women’s Local Islamic Ritual in Uzbekistan”を共同制作し、イギリスやウクライナなど世界6カ国の映画祭で入選する。

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