東京ドキュメンタリー映画祭 in OSAKA 2021 > 上映作品 > ヴィジュアル・フォークロアの世界
上映作品
特集2ヴィジュアル・フォークロアの世界
3月20日(土)19:00~
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作品1
デヴォキ〜神に捧げられた女たち〜 上映時間76分
ヒマラヤ山麓に残るデヴォキと呼ばれる女性たちの記録。ヒンドゥー教のドゥルガー女神を篤く信じるこの地方では、さまざまな祈願の代償として幼い少女を寺院に捧げる習慣が残されていた。少女たちは神の妻とみなされ世俗的な結婚は許されず、数奇な人生を送ることとなる。ネパールの研究者との2年にわたる調査研究に基づいた貴重な記録映像であり、いにしえの寺院娼婦を伝える彼女たちの姿を通して、ネパール社会のタブーに切り込む問題作である。本作品は1992年に撮影したものを、2019年に未公開カットを追加して長編映画に作り直した。2019年/76分
監督のことば
30年前、ネパールにまだ国王がいた時代、カトマンズで不思議な毎日を送っていた。毎朝、ヒンドゥー寺院の鐘の音と線香の香りで目覚める暮らし。シャーマンや占星術師が紡ぐ言葉によって人々の人生が動くという、日本では想像もしなかった社会だ。ある日、街でこんな話を聞いた。「西の方には、寺院付きの美しい娼婦がたくさんいるらしい。」男たちの少し下卑た表情にひるんだが、ネパールの研究者がその意味することを教えてくれた。女性たちは神に仕える聖なる存在なのだと。それがなぜ娼婦と呼ばれるのか?一人の女性として何を思って生きているのか?話を聞きたくて、西のはずれの空港から10時間の山道を歩いた。待っていたのはあからさまに警戒する村人。女性たちも同様だった。何度か通ううちに受け入れてくれる人も出てきたが、実は、彼らが語ることの何が本当なのか最後まで分からなかった。このドキュメンタリーは、ヒマラヤに残る女神信仰を描いたものだが、撮影を通して見えてきたのは人の心の掴み切れない複雑さであった。
監督プロフィール
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弘理子
監督。ネパールの学術調査をきっかけに、ドキュメンタリー制作を始める。映像民俗・人類学、日本、ヒマラヤなどアジアを中心に作品を作る。ヒマラヤの塩の交易やカトマンズの路上少年の生活、バングラデシュのハニーハンターなどを記録。その他、ヴィジュアルフォークロアの映像人類学作品、NHKの山岳シリーズ、築地市場を歴史・芸術・言語から多角的に捉えた番組などを制作。
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作品2
説経浄瑠璃 三代目・若松若太夫 一声二節のわざ 上映時間17分
一棹の三味線と自らの声をたよりに、哀感漂う、聞く人の涙を誘う弾き語りをしてきた説経浄瑠璃三代目・若松若太夫。若太夫がめざす一声二節(イチコエニフシ)の説経とは?
日本舞踊家・坂東冨起子や八王子車人形五代目家元・西川古柳との共演を通して、その語りの姿に迫る。2020年/17分
監督のことば
説経浄瑠璃三代目・若松若太夫と記録映像作家の遠藤協は、後継者獲得や後進への伝承のために、2019年秋から若松若太夫の公演活動を紹介する記録映像の制作に取り組んでいます。説経浄瑠璃の歴史は深く、語るべきことは多いですが、この短編作品では三代目・若松若太夫の語りの存在感をカメラで切り取りたいと思いました。この映像をきっかけに説経節への興味を抱く方が増えてくれたら嬉しいです。監督プロフィール
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遠藤協
1980年生。大学で日本民俗学と文化人類学を学んだ後、映画美学校ドキュメンタリーコースを修了。ドキュメンタリー映画や民俗映像の制作をはじめ、劇場配給や配信に携わる。無形文化財の映像記録作成に関する論考も発表している。民俗的事象にこだわることで、現代社会の性格をあぶり出すことを方法論とする。2017年のドキュメンタリー映画『廻り神楽』が毎日映画コンクールでドキュメンタリー映画賞を受賞。現在は、日本統治後の台湾で発生したとある宗教現象に関する新作映画を製作中。