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上映作品
短編1日本とアジア、民主主義の問い
12月5日(土)12:00〜上映
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作品1
パンク・セーブ・ザ・クイーン 上映時間20分
民族紛争が絶えず起こるミャンマーでは、人々は政治的に分断され、マイノリティの権利は認められてない。そんな中、音楽を通じて人々を繋げようとするパンクミュージシャンたちがいた。「サイドエフェクト」と呼ばれるパンクロックバンドのリーダー・ダーコは、ミャンマー各地でワークショップや音楽祭を開催し、民族や宗教に関係なく人々が平和に共存できることを音楽で体現しようと、ミュージシャンを集め、ステージでギターをかき鳴らす。まだまだ人権抑圧的な政策の続くミャンマーで、少数民族間の平和を再構築しようとするあるミュージシャンの奮闘を描く。
原題:Punk Save the Queen2019年/20分
監督のことば
過去5年間のミャンマーのロヒンギャ問題を取り上げたとき、私はビルマの仏教徒の大多数からの激しい反発に直面しました。ビルマの人々のイスラム教徒に対する根底にある不信を目撃した後、主人公ダーコとの出会いは私にとって目を見張るものでした。政府のプロパガンダや民族主義の高まりにもかかわらず、パンクアーティストは、政治的にも文化的にも進歩的であることに気づきました。若いミュージシャンを養成するワークショップの撮影や、その後の大勢の観客の前での素晴らしいパフォーマンスなど、「パンク・セーブ・ザ・クイーン」を完成させるために半年以上を費やしました。パンクのイデオロギーは、女王アウンサンスーチーによって統治されている分裂した国を救うことができると私は信じています。
監督プロフィール
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久保田徹
1996年神奈川県横浜市生まれ。大学在学中にミャンマーのロヒンギャの取材を始め、バングラディシュの難民キャンプに学校を建設しようとする日本在住のロヒンギャを取材した『祈りの果てに』は東京ドキュメンタリー映画祭2018で上映された。現在はロンドンを拠点にドキュメンタリー映像作家として、NHK番組やYahoo!ニュース、VICEなどで活躍している。
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作品2
東京2018 プノンペン 上映時間32分
2018年夏、東京オリンピック開催を2年後に控えた東京と、総選挙で与党が全議席を獲得してしまったプノンペンで、そこに生きる人々のポートレイトや風景を映し出す。あなたにとって「幸せとは何か?」「愛とは何か?」「あなたは何者か?」と矢継ぎ早に投げられるシンプルな質問に人々は向き合っていく。その手法はジャン・ルーシュと寺山修司が残した方法論へのオマージュであるが、プノンペンという他者のコンテクストと共に東京を眺めることで、自らが住む街のイメージや、日々暮らす中で抱える不安などの解体を試みている。2020年/32分
監督のことば
本作は、東京とプノンペンに住む人々に様々なシンプルな質問を投げかけています。この質問がユニークな点は、時代や国、文化、年齢によって、答えが変わってくる点です。しかし本作では東京とプノンペンのフッテージをミックスするという、新たな方法に挑戦しています。国も文化も異なる2つの都市を並べ、同じ質問をすることで、相対的に互いの都市を見つめ直し、新たな視点が浮かび上がってくるのではないかと考えました。現代の東京とプノンペンに住む人々にとって、「愛」や「幸福」とは何なのか。あらゆる人々にこの質問を投げかけながら、私自身が、答えなきこれらの質問と向き合う旅に出かけたような、そんな感覚でした。2018年のプノンペンは国民総選挙があり、政治的に不安定な時期でした。直接的に政治を扱う報道や言論は制限され、選挙はフン・セン首相率いる与党が全議席を獲得し、現在も事実上の独裁政権が続いています。そんな時期だからこそ、多様な人々にカメラを向け、政治や観光などの情報からは漏れてしまうような、現代のプノンペンに住む人々の多様性にカメラを通して触れてみたい。そのようなことを考え、本作を制作しました。
監督プロフィール
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歌川達人
1990年生まれ。主にドキュメンタリーのフィールドで活動する。立命館大学映像学部卒業後、フリーランスとしてNHK番組やCM、映画の現場で働く。初監督ドキュメンタリー「カンボジアの染織物」(18)は4か国で上映され、Beyond The Borders International Documentary Festival 2018のコンぺで審査員特別賞を受賞。短編「時と場の彫刻」がIFFR2020、Japan Cuts 2020で上映される。
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作品3
ヤジと民主主義 上映時間46分
2019年7月15 日、安倍前首相が札幌で参議院選挙の応援演説をしている時、ヤジを飛ばした男性が多数の警察官によって排除される事件が起きた。彼のほかにも、プラカードを掲げようとした女性など、9人が排除された。道警はのちに排除を適正だったと結論付けたが、およそ民主主義を語る国家において、その行為は正当と言えるのだろうか。番組では独自にその日の映像を集め、排除された当事者や、元警察官、公職選挙法や刑法の専門家に話を聞くほか、かつて戦前治安維持法で逮捕された老人の証言などを交え、ヤジ排除の正当性を真正面から検証する。2020年/46分
監督のことば
2019年7月15日、札幌での安倍首相の応援演説で、「安倍やめろ」とヤジを飛ばした男性が警察官に排除された。さらに「増税反対」と声を上げた女子大生も同様だった。その日排除されたのは声を上げた人だけではなく、無言でプラカードを掲げた人もいた。プラカードを掲げられなかった女性はこう語る。「無言でプラカードを掲げるというのは、誰にでもある権利。弱者ができる唯一の一人でできることを奪う国は、民主主義ではない」。
かつて日本では言論の自由が抑圧されていた時代があった。治安維持法によって、思想の自由さえも奪われていたのだ。声に出した中身や無言で掲げるプラカードの内容によって、排除の対象にされてしまう。あの日の札幌では、過ぎ去ったはずの時代のように民主主義が大きく制限されていたのではないだろうか。
監督プロフィール
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長沢祐
1993年、北海道歌志内市出身。早稲田大学スポーツ科学部卒。民間金融機関営業マンを経て2018年に北海度放送入社。報道部 政治担当(番組作成時は警察・司法担当) 「ヤジと民主主義」は初の番組制作。