東京ドキュメンタリー映画祭 > 上映作品 > 原子力と人間
上映作品
短編3原子力と人間
12月6日(日)10:00〜上映
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作品1
被爆死した米兵を追って 上映時間26分
2016年5月、当時のアメリカ合衆国大統領バラク・オバマ氏が広島を訪れた。その際、前大統領からハグされた森重昭さん。広島に投下された原子爆弾によって、自らも被爆した。森さんは、1974年から1975年にかけてNHKが集めた「原爆の絵」の中に米兵が描かれている絵を見つけた。原爆によって米兵も被爆死したのではないかという思いから、森さんは40年以上かけて調査を行い、広島市内に捕虜として収容されていた米兵12人が広島原爆により亡くなったことを突き止めた。広島原爆の犠牲となった米兵の物語を追った。2020年/26分
監督のことば
大学の授業で、全国に戦時中墜落した米軍機の慰霊碑があることを知った。調べてみると、米軍機B24が墜落した山口県柳井市に「平和の碑」があることがわかった。碑には柳井市に墜落した米軍機の搭乗員が広島原爆で被爆死したことと、平和への願いが刻まれていた。広島原爆で米兵が亡くなったことはあまり知られていない。また、碑の関係者の多くは既に故人となっていた。今、碑に関する記録を残さなければ、碑に関する記憶は消えてしまうのではないかという思いからドキュメンタリーを制作した。監督プロフィール
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谷井健吾
1997年、東京都出身。中央大学総合政策学部在学中に、本作品を制作。現在は大阪で記者として働いている。担当は司法。
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作品2
我が友・原子力 放射能の世紀 上映時間56分
広島・長崎の原子爆弾投下から75年、戦後は平和利用と被ばく被害の狭間で揺れ続けた原子力。その歴史と翻弄された人々を、『天皇と軍隊』の渡辺謙一監督が5章構成で綴った意欲作。福島第一原発爆発直後、放射能雲の流れる中“トモダチ作戦”に従事した空母ロナルド・レーガンのメンバーや、ビギニ環礁、の水爆実験で被ばくした漁船乗組員、ラジウムを使用した蛍光塗料の工場で。労働者にガンが多発した“ラジウムガールズ”、核実験に従事した退役軍人など、これまでクローズアップされてこなかった人々の存在に焦点を当て、人類にとって「核とは何か」を改めて問いかける。2020年/56分
監督のことば
“被ばくする”とはどういうことなのか。私たちの想像力は希薄と言わざるをえない。重複するガン、脱毛症、白血球の減少、流産、先天性奇形、、放射線被ばくの危険は避けられない。原子の属性であり、その危険を回避するには放射線源から遠ざかることだけだ。1世紀にわたる被ばく者の数を、否認と虚偽の数々を想像してみよう。私たちは科学的知見の意図的分散化と大量な情報の断片化の前で、判定する意思を削がれているのではないだろうか。この作品は、被ばくとその社会的政治的背景を描き、被ばくを隠蔽するメカニズムの由来を探る。被ばくの科学を絵解きし、労働被ばく、広島・長崎の被ばく者、ロナルド・レーガン兵士、ビキニの漁船員たちの自覚的な言葉を紡いでゆく。その言葉の群れは、軍、国家権力と対峙し、原子力産業の傲慢に向ける犠牲者の意識の覚醒として記録される。この夏、原爆投下75年特集番組として独仏公共T V・arteアルテで放送され好評を得ました。監督プロフィール
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渡辺謙一
1975年契約助監督として岩波映画製作所入社、1981年毎日放送・文明シリーズ“ザ・ビッグデイ”で監督デビュー、映画の発明・リュミエール兄弟、女性史の誕生・高群逸枝など、1984年文化庁在外研修員としてパリに1年留学、1997年パリに移住、フランスや欧州のテレビ向けドキュメンタリーを制作。『桜前線』で2006年グルノーブル国際環境映画祭芸術作品賞受賞。近年は『天皇と軍隊』(2009)『ヒロシマの黒い太陽』(2011)『フクシマ後の世界』(2012)『核の大地・プルトニウム物語』(2015)『国家主義の誘惑』(2018)など、欧州において遠い存在であるヒロシマやフクシマの共通理解を深める作品制作に取り組んでいる。最新作は『我が友・原子力–放射能の世紀』(2020)