東京ドキュメンタリー映画祭 > 上映作品 > 日本発ダイレクトシネマ
上映作品
短編5日本発ダイレクトシネマ
12月6日(日)14:00〜上映
-
作品1
炉 上映時間16分
元来、仙台を発祥とする炉端焼き。今では世界的にもROBATAYAKIとして親しまれ、旬の魚介や肉を取り入れて焼くスタイルを始めたのは、北海道釧路市にある老舗「炉ばた」とされている。そのお店で今でも唯一焼き手を務める中島静子さんの所作を淡々と描きつつ、火を巡る人間の営み、和人目線によるアイヌ文化の表象不可能性、また燃料税の高騰や環境問題をあぶり出そうと試みた、ある冬の営業日の記録。2019年/16分
監督のことば
作品が形になるまでには、偶然の連続が導いてくれるように思えます。今回も例に漏れず、アイヌ文化について取材旅行中に、美術家の端聡さん(客人役として出演しています)がたまたま案内してくれたのが本作の舞台となった釧路の名店「炉ばた」でした。囲炉裏端で炭火を自在に操り、どの食材も絶妙なタイミングで調理する焼き手・中島静子さんの所作にすっかり魅せられた私は、彼女とお店の両方を記録に残したいと強く思ったのです。初めて訪れた日から約二年後に実現した撮影は、冬の営業日の二日間で行われました。他のお客さんの迷惑にならないよう、脚本や絵コンテなど特に用意もせず、通された席がそのままアングルとなりました。肖像としては十分な撮れ高も、何かが足りないなと思っていた二日目の終盤、たまたま画面に写り込んだある光景により、物語が一気に立ち上がったのです。それが果たして何なのか、是非ご覧いただきたいと思います。監督プロフィール
-
荒木悠
1985年生まれ。大学では彫刻を、大学院で映像を学ぶ。近年では再現・再演_・再話の虚実性を通してある物事や象徴の再解釈を提示する映像インスタレーションを展開している。2018年、共同監督を務めた『マウンテン・プレイン・マウンテン』がロッテルダム映画祭でタイガーアワード及びチューリッヒVideoexでグランプリを受賞。同年『利未記異聞』がカッセル・ドキュメンタリー・フィルム・アンド・ビデオ・フェスティバルで審査員特別賞。
http://yuaraki.com/
-
-
作品2
有酸素ナンパ 上映時間31分
好意を抱いた特定の人物に声を掛けるいわゆる「ナンパ」を、見知らぬ他者同士が接触する“技術的に高度なコミュニケーション”として捉え、4つのアクションを通じて再考する作品。コミュニケーションが高度に自動化、高速化された都市空間で、都市と人間、あるいは人間同士の関係性を探ってゆけば、「ナンパ」もまたジョギングやランニングなどの身体的なトレーニングと同様、私たちのコミュニケーションを鍛えることができるのではないか…そのような問いを孕んだ行為が、“新しき社会のトレーニング”として炸裂する!2019年/31分
監督のことば
「今何時ですか?」や「道を教えてもらえますか?」といった会話は、携帯電話の普及とともに消えてしまった。いまや他者(赤の他人)と全く話さない日があったとしても、それほど珍しくはないだろう。今回ぼくは、都市における他者とのコミュニケーションを考えるために「有酸素ナンパ」と名付けた4つのアクションを試みた。なかば無理やり作りあげた状況は、ぎこちないものでありながらも、新しいコミュニケーションの契機を感じる瞬間を含んでいたと思っている。監督プロフィール
-
トモトシ
1983年山口県出身、現在は東京を拠点に活動。豊橋技術科学大学を卒業後、10年にわたって建築設計に携わる。2014年より映像、インスタレーション、パフォーマンス作品を発表。近年は「都市空間や公共ルールに歪みを生むアクションを行い、そのリアクションを含めた振る舞いを記録する」ことで制作をしている。
-
-
作品3
想像 上映時間54分
世界的に注目されている演劇カンパニー・チェルフィッチュ。演出家の岡田利規は俳優の”想像”という作業を重要視し、代表作「三月の5日間」のリクリエーションに挑む。本作はオーディションを経て選ばれた7人の俳優のうち1人に焦点を当て、その俳優の本読みからパリ公演までの二年間に渡るパフォーマンスを“想像”により豊かにしていく過程を、ミニマルにリフレインさせる手法を用いて描く。小道具やセットを極力配したシンプルな空間で、俳優が”想像”だけを武器に充実したパフォーマンスを繰り広げるまでのプロセス、その映画は、「他者への想像」が希薄化した現代に痛烈な批評性をもって作用するだろう。2020年/54分
監督のことば
わたしたちが暮らす社会は「想像」という行為によって支えられている。 道路で事故が起きないためにはどうすれば良いか?どんな料理を作ればお客が喜ぶか?障害を持った人が健常者と同じように通勤するためには何が必要か?わたしたちの生活空間はそのような多層的な想像、その実践の集積の上に成り立っていると言っても過言ではない。豊かさとは、想像の総量で測ることができると考える。チェルフィッチュという演劇カンパニーを率いる岡田利規もまた、「想像」という営みを重要視する作家である。演劇作品における「想像」は多様なアウトプットの形を想定しうる。俳優の演技、美術や音楽、照明や客席づくり…
この作品は、国際的に大きな注目を集める演出家・岡田利規が主宰を務める演劇カンパニー”チェルフィッチュ”の創作の現場の魅力を、映像で表現するために作られる。主に焦点を当てるのは、チェルフィッチュのユニークな創作の現場だ。観客にチェルフィッチュのクリエーションの魅力、オリジナリティ、作り出されるグルーブ…それらを映像を通して感じてもらいたい。映像の中の岡田や若者たちの姿や姿勢から、「想像」の持つ大きな力を観客自らの中に発見してもらいたい。その人が、誰かを、何かを、「想像」することに、本作が繋がることを願って。
監督プロフィール
-
太田信吾
1985年生まれ。長野県出身。大学時代は哲学・物語論を専攻。映像制作に興味を持つ。処女作のドキュメンタリー『卒業』がイメージフォーラムフェスティバル2010優秀賞・観客賞を受賞。初の長編ドキュメンタリー映画となる『わたしたちに許された特別な時間の終わり』が山形国際ドキュメンタリー映画祭2013で公開後、世界12カ国で配給される。俳優として演劇作品のほか、TVドラマ・映画等に出演。