東京ドキュメンタリー映画祭2020

上映作品

短編10カメラは踊る

12月9日(水)16:40〜上映

  • 時と場の彫刻
    時と場の彫刻
  • 作品1

    時と場の彫刻 上映時間8分

    鏡を前にダンサーは踊る。躍動する身体に対し、カメラは同じ位置にとどまり続ける。固定されたフレームが彼の生きた時と場を捉え続ける限り、映画はフレームの外さえをも捉え、広がってゆく。どこからともなく聞こえる祈りともに、やがて嵐がやってくる。 プノンペンを拠点にゲイダンスカンパニーを立ち上げ、活動するカンボジア系アメリカ人ダンサー、Prumsodun Ok。本作は彼の身体表現を通じ、“他者の生きた時間に対して映画は何が出来るのか”という問いに向き合ったドキュメンタリー。

    2020年/8分

監督のことば

カンボジアのダンサーを撮る私に、出来ることは何なのか。クメール語が堪能ではない、日本人である私は、被写体と言語で接続しうるのか。あるいは、舞台パフォーマンスというある種のアートを、ドキュメンタリーとして撮ることで彼の表現を矮小化してしまわないか。
ふと、映画の歴史に目を向けてみる。世界中を旅し、シークエンスショットで様々な映像を撮影したルミエール兄弟も、カンボジアのダンサーを撮影していたことに気がつく。その映像を見て、「当時の、あの場所の、継続する時間と場をフィルムが捉えている」と感じた。
そもそも、私にとって映画は、「暗闇の中で、ただ、瑞々しい画面を見続けることの幸福と驚き」であり、それがルミエールの頃に発明された映画の原始的なスタイルであるし、映像で溢れる現代で失われつつある映画なのではないだろうか。友人であるダンサー(Prum)の身体表現にカメラを向ける中で、そのことに気がつき、本作を制作した。

監督プロフィール

  • 1990年生まれ。主にドキュメンタリーのフィールドで活動する。立命館大学映像学部卒業後、フリーランスとしてNHK番組やCM、映画の現場で働く。初監督ドキュメンタリー「カンボジアの染織物」(18)は4か国で上映され、Beyond The Borders International Documentary Festival 2018のコンぺで審査員特別賞を受賞。短編「時と場の彫刻」がIFFR2020、Japan Cuts 2020で上映される。
  • 作品2

    メランコリア 上映時間5分

    在仏の舞踏家/映画作家である岩名雅記監督の6分弱の超短編映画。
    舞踏家である監督が日欧の各地を遊歴するうちに少しづつ撮りためた動画が素材となっている。その範囲は監督の住む南ノルマンディをはじめ、東京、京都、水上、パリ、ナポリ、ギリシャ・キスイーラ島、キプロス島・ニコシア近郊、ドイツ・ブルーリン城にまで及んでいる。画像はすべて実写であるが、そこにダイアローグを挿入することによってドキュメンタリーとフィクションの「あわい」と狙った作品。音楽は成田護のオリジナル。

    2020年/5分

監督のことば

監督です。早いもので最初に映画撮影を始めた2004年から15年が経ちました。60歳からの映画作りで十分映画を勉強する暇もなく、それでいて5作品とも劇映画、しかも長編です。
私の本業はソロの舞踏家で昭和の末年(1988)にフランスにわたり、集団なし、フランス国や地域からも助成なしのたったひとりでやってきました。映画作りも全く同じで映像集団の名前も Solitary Body (孤独なカラダ)です。
どうしてこうなってしまったのか?私は世間でいう引きこもりの一種でおそらく75年間の間で数えるほどしか人と出会っていない仕事もしていないのです。それでも40年間、ヨーロッパや世界の各地を出稼ぎ仕事だけでやってくることが出来たのは「自分の好きなこと以外はやらない」という強い信念/偏屈の賜物だと思っております。 「自分の好きなこと以外はやらない」は映画作りに関しても全く同様ですが、映画と、<ひとりで踊ること>の大きな違いは圧倒的な制作費の差です。それでいてこれがなかなか辞められません。ダンスで生涯を棒に振ってきたのだから映画によって更に更に長いイノチの棒を振り回して生涯を閉じたいのです。

監督プロフィール

  • 岩名雅記
  • 岩名雅記
    1945年東京生まれ。67年TBSを依頼退社。演劇活動を経て、75年師もなく突如ソロ舞踊を開始。84年迄に全裸、不動、垂立による実験的ソロ・パフォーマンスを150回以上にわたって展開。83年仏アビニョン国際演劇祭招待を機に活動の中心をヨーロッパに移し88年フランスに移住。ドサ回りを信条に現在まで70カ国200都市でソロ活動を展開。96年フランス南ノルマンディにアトリエを開設、10年単位の国際セミナーを25年間継続、2018年に終了。2006年、初の長篇劇映画「朱霊たち」を制作、2009年ポルトベロ国際映画祭(英国)でグランプリ受賞、2010年の「夏の家族」共々ロッテルダム映画祭に公式招待される。以後2013年「うらぎりひめ」、2017年には第4作「シャルロット・すさび」を完成。
  • 作品3

    大野一雄三部作 光への四つの道 上映時間69分

    昨年1月、96歳で逝去したジョナス・メカスだが、世界的な舞踏家・大野一雄(1906-2010)が100歳を迎えた2006年、映像作家であり、ダンサーでもあるヴィルジニー・マーシャンと大野が踊る様子を彼が撮影するという、奇跡のようなコラボレショーンを果たしていた。本作はマーシャンが二人の舞踏をまとめ、メカスがプロデュースした3部構成の作品『大野一雄 三景』(2010)をマーシャン自身が再編集し、一つの作品としてまとめたもの。

    2020年/69分

監督のことば

『大野一雄 三景』は、オープニング、エンディング、タイトル、シーンの編集が異なる3本の映画として最初に編集されました。最初の2本の映画は大野一雄の99歳と100歳の誕生日に撮影され、3番目の映画は大野一雄が101歳の3年目に撮影されました。
数ヶ月前の2020年5月、私はこれら3つの映画を1つに再編集し、すべてのシーンをカットして再配置し、音楽を変更し、新しい要素を追加し、日本語に翻訳しました。生前、ジョナス・メカスは、この作品を一つにするべきだと言っており、私はできた映画に新しいタイトル「光への四つの道」と名付けました。映像は、ジョナス・メカス、ゾルタン・ハウビル、目を閉じて踊っている私自身、そしてサロナ・オノによって撮影されています。映画の第4部は大野一雄に敬意を表して、ニューヨークのエミリーハーベイ財団で行われた舞踏を追加しました。オリジナルの映像は、東京、ブエノスアイレス、ニューヨークで舞踏の間に上映され、また大野一雄の記念日として、2014年10月26日と27日にニューヨークのアンソロジーアーカイブスでも上映されました。

監督プロフィール

  • ヴィルジニー ・マーシャン
  • ヴィルジニー ・マーシャン
    舞踏家・映像作家。1984年日本で生まれ、5歳の時フランスに戻り、その後パリでダンスと映像を学ぶ。2004年、パリでジョナス・メカスと出会い、その後、晩年まで行動を共にする。
  • 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
  • アジアンドキュメンタリーズ