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上映作品
特集3からむしのこえ
12月10日(木)16:20〜上映
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からむしのこえ 上映時間91分
奥会津の昭和村では、豊かな自然のなかで「からむし」という植物を育て、繊維をとって糸にし、布を織る営みが数百年ほど受け継がれている。それは新潟県に出荷され、上質な布として越後上布や小千谷ちぢみの材料となる。カメルーンやボルネオて狩猟採取民研究してきた映像人類学者が、美しい映像でからむし織の工程をつづり、携わる人びとの情感豊かな声に耳を澄ませていく、静かなる傑作。2019年/91分
監督のことば
草の糸がつなぐ人と人、時間と場所。福島県の昭和村には数百年にわたる営みを受け継ぐ人たちがいます。「からむし」という植物を育て、繊維をとって糸にし、布を織るという暮らし。奥会津の山あいにある小さな村は、厳しくも豊かな自然のなかで、からむしを栽培してきました。その繊維は新潟県に出荷され、最も上質な布として知られる越後上布や小千谷縮の原材料ともなっています。なぜ、どのようにして受け継がれてきたのか、受け継がれてゆくのか。これらの問いの答えは、からむしにたずさわる人々の無数の行ないや思いのなかにあるのだと思います。『からむしのこえ』は、その一端を紹介するものです。
春夏秋冬、季節の変化に応じて栽培から織りへと進む工程では、長い歳月をかけて洗練された技が生かされ、伝えられます。数ある工程には、各自の作業もあれば仲間との作業もあります。そこでは、言葉にならない技だけではなく、技をささえる言葉も受け継がれてゆきます。また、からむしを育てるなかで、成長の様子をうかがうことを「からむしの声を聞く」と言うこともあるそうです。耳を傾けるような姿勢、耳を澄ませるような関わり方があるということです。
『からむしのこえ』は、からむしによって導かれる人々の行為や、からむしによって語らされる人々の言葉を記録した映画であるともいえます。その喜びやとまどいに触れることで、映画を見る方々が、自分自身の声にも耳を澄ませ、これからの暮らしを考えるきっかけを得ることを願っています。
監督プロフィール
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分藤大翼
1972年生まれ。信州大学准教授。1996年よりカメルーン共和国の熱帯雨林地域に暮らす狩猟採集民の調査研究を行なう。2002年より調査集落において記録映画の制作を開始。主な映像作品は『Wo a bele〜もりのなか〜』(2005)、『Jengi』(2008)、『jo joko』(2012)、『cassette tape』(2013)。『からむしのこえ』は国内で制作した最初の作品。主な共著は『フィールド映像術』(古今書院)。