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上映作品
特集5ヴィジュアル・フォークロアの世界
12月11日(金)13:30〜上映
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作品1
デヴォキ〜神に捧げられた女たち〜 上映時間76分
ヒマラヤ山麓に残るデヴォキと呼ばれる女性たちの記録。ヒンドゥー教のドゥルガー女神を篤く信じるこの地方では、さまざまな祈願の代償として幼い少女を寺院に捧げる習慣が残されていた。少女たちは神の妻とみなされ世俗的な結婚は許されず、数奇な人生を送ることとなる。ネパールの研究者との2年にわたる調査研究に基づいた貴重な記録映像であり、いにしえの寺院娼婦を伝える彼女たちの姿を通して、ネパール社会のタブーに切り込む問題作である。本作品は1992年に撮影したものを、2019年に未公開カットを追加して長編映画に作り直した。2019年/76分
監督のことば
30年前、ネパールにまだ国王がいた時代、カトマンズで不思議な毎日を送っていた。毎朝、ヒンドゥー寺院の鐘の音と線香の香りで目覚める暮らし。シャーマンや占星術師が紡ぐ言葉によって人々の人生が動くという、日本では想像もしなかった社会だ。ある日、街でこんな話を聞いた。「西の方には、寺院付きの美しい娼婦がたくさんいるらしい。」男たちの少し下卑た表情にひるんだが、ネパールの研究者がその意味することを教えてくれた。女性たちは神に仕える聖なる存在なのだと。それがなぜ娼婦と呼ばれるのか?一人の女性として何を思って生きているのか?話を聞きたくて、西のはずれの空港から10時間の山道を歩いた。待っていたのはあからさまに警戒する村人。女性たちも同様だった。何度か通ううちに受け入れてくれる人も出てきたが、実は、彼らが語ることの何が本当なのか最後まで分からなかった。このドキュメンタリーは、ヒマラヤに残る女神信仰を描いたものだが、撮影を通して見えてきたのは人の心の掴み切れない複雑さであった。
監督プロフィール
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弘理子
監督。ネパールの学術調査をきっかけに、ドキュメンタリー制作を始める。映像民俗・人類学、日本、ヒマラヤなどアジアを中心に作品を作る。ヒマラヤの塩の交易やカトマンズの路上少年の生活、バングラデシュのハニーハンターなどを記録。その他、ヴィジュアルフォークロアの映像人類学作品、NHKの山岳シリーズ、築地市場を歴史・芸術・言語から多角的に捉えた番組などを制作。