東京ドキュメンタリー映画祭2022
東京ドキュメンタリー映画祭上映作品 > 人類学・民俗映像2

上映作品

人類学人類学・民俗映像2 上映時間119分

12月14日(木)11:45 / 12月20日(水)13:30

アフリカとオセアニアの精神世界に迫る2作品。『ナマラリ』は、伝統的な洞窟壁画で知られる西オーストラリアのアーティスト、ドニー・ウーラグッジャの活動を20年にわたって記録する。ベナンの精霊ヴォドゥンに対する人々の祈りと生活を記録した『ケノウ村の祭祀』では、精霊と少女の結婚や、霊が宿る人形と婚姻関係を結ぶ男性、災厄を避ける祈りなどを描く。

◎舞台挨拶
▶︎12/14(木)14:45の回 上映後
 登壇:ニーク・ニコラス監督、Herma Darmstadtさん(『ケノウ村の祭祀』プロデューサー)
 ビデオメッセージ:ティム・ママリー監督
▶︎12/20(水)13:30の回 上映後
 ビデオメッセージ:ティム・ママリー監督

 

  • ナマラリ(NAMARALI)
    ナマラリ(NAMARALI)
  • 作品1

    ナマラリ(NAMARALI) 上映時間52分

    オーストラリアのアーティスト、ドニー・ウーラグッジャが、失われゆく伝統文化との深い結びつきを取り戻す姿を追う。キンバリー地方では、先祖代々、洞窟や岩棚に描かれた創造主「ワンジナ」を黄土で塗り替えてきた。ドニーがいなくなればその伝統も消えゆく定めにあるという。彼は最も偉大な「ワンジナ・ナマラリ」を訪れ、1週間に渡って洞窟の4メートルの壁画を塗り直し「神を生き返らせる」ことを決意する。

    2021年/52分/オーストラリア

監督のことば

この映画『ナマラリ』を世界に届けられることを光栄に思います。ドニー・ウーラグッジャとの共同作業はチャレンジであり非常にやりがいのあるプロセスでした。ドニーは自分の考えを共有してくれることに対して非常に寛大でしたし、私は完成した映画で彼の寛大さを正当に評価することを望んでいます。先祖伝来の土地から切り離された人々の嘆きとして、また「ワンジナ」文化を未来へ向けて再び蘇らせるロードマップとして、『ナマラリ』は力強い記録となるのです。

監督プロフィール

  • ティム・ママリー(Tim Mummery)
  • ティム・ママリー(Tim Mummery)

    ドキュメンタリーやニュース、特集媒体の分野で活躍するフリーの映画監督、撮影監督、映像プロデューサー。オンラインニュースサイト「www.theage.com.au」の映像コンテンツの創設者として2007年にキイル賞を受賞、また権威あるジャーナリズムに贈られるWalkley Awardに二度ノミネートされている。The Guardian、The New Daily、Foxtelなどに向けた映像コンテンツの制作を行い、Fairfax mediaでも制作を続けている。撮影した記録写真は出版物やオンラインニュースメディアで発表されている。先住民文化の保護活動を行っているYorna Woolagoodja(監督、編集、プロデューサー)と共に洞窟壁画の再生を追った本作『NAMARALI』のほか、タスマニアの原住民写真家リッキー・メイナードを追った2部構成のABCテレビドキュメンタリー「Portrait of a Distant Land」の様にアーティストの活動を繊細に描いた映画を専門としている。これまで Arts Centre Melbourne、 The Carpentaria Land Council、ACCA,、Foxtel Festival TV,、Gundjeihmi Aboriginal Corporation、Mowanjum Arts Centreなど多くのクライアントと共に幅広い制作活動を行っている。

  • 作品2

    ケノウ村の祭祀(The village of Kenou) 上映時間67分

    西アフリカのベナンに古くから伝わるアニミズム的な精霊ヴォドゥンへの信仰を、ある村の人々の日常生活を通して描く。村の巫女は重要な決定をする際必ず祖霊に相談し、悪しきものから護ってもらうようにお願いする。また、10代の少女たちが2年間ヴォドゥンに仕える際に行われる儀式の撮影も許された。現地のことわざや詩の意味に注意し、村に流れる日常生活のリズムのなかで信仰を描いた。

    2023年/67分/オランダ

監督のことば

ヴォドゥン(ヴードゥー)は未だ西洋世界において、神秘的な儀式や血塗れの供物、憑依や闇の力への信仰と関連付けられています。三世紀に渡る植民地支配のあいだ、キリスト教の支配者たちは古くからの文化を悪魔的な儀式へと変形させようとしました。多くの西洋人たちは今日でもハリウッド映画の解釈でしか彼らの文化を知ることが無く、刺激的な娯楽くらいにしか思っていません。この映画に登場する人々にとって、ヴォドゥンとは黒魔術ではありません。彼らにとってヴォドゥンは祖先からの贈り物であり、人生に観念や意味を与えてくれる、限りなく広い世界観そのものなのです。それは日常で起きる事への指針としてはたらきます。ケノウ村の住人は自分たちの伝統に誇りを持っており、彼らの誇りを披露したいと思っています。彼らは今もなお西洋の生活様式が彼らのものより優れていると信じ込ませようとする影響に苦しめられています。今やっと、彼らにとって人生を祝福する別の方法があることを私達に示すことができる時が来たのです。

監督プロフィール

  • ニーク・ニコラス(Niek Nicolaes)
  • ニーク・ニコラス(Niek Nicolaes)

    1952年オランダ生まれ。臨床心理学と科学哲学を学ぶも30代でその分野から去り、古いバンでサハラ砂漠を横断する彼の初めての冒険に出ることを決意。旅の途中でアフリカの人々の強さとホスピタリティと人生への向き合い方に強い衝撃を受け魅了される。その後も妻であり写真家のHerma Darmstadtと共に多くの旅をする。2016年からは共同プロジェクトとしてベナンにある小さなケノウ村を度々訪れるようになる。こうして彼らを通じて村民たちの文化が西洋の視点に触れられた時に、映画のコラボレーションというアイデアが生まれた。こうして突拍子もない発想として始まった「なにか」は、4年後に「人の手に負えない」映画に発展した。今や村民たちはこの映画の制作者たちがヴォドゥンと先祖たちから特別な使命を帯びて送り込まれたものだと確信している。その使命とは、自分たち世界と西洋世界との断絶への橋渡しとなることだ。ケノウ村の人々に偶然は存在しない。偶然は知ることを求めていない人間にのみ存在するからである。ニーク・ニコラスのデビュー作である本作は2017年から2021年に撮影され、独力で作られていると同時に村民達の多く協力によって作られた作品である。