東京ドキュメンタリー映画祭2022

上映作品

短編忘却に抗う 上映時間96分

12月4日(水)16:55 / 12月8日(日)12:20

節目の報道では捨象されがちな被災地の記憶と“現在”にこだわる4本。ロトスコープアニメーションによる“あの日”の記憶。かつて大津波が襲った北海道奥尻島で静かに進む限界集落化をみつめる人々。故郷を離れる人が続出する一方で移住者が現れる福島県浪江町の今。「メルトダウンは防げた」と、ひとりで福島原発事故の検証を続ける記者。彼らの声が問うものとは?

  • ブタデスの娘
    ブタデスの娘
  • 作品1

    ブタデスの娘 上映時間8分

    パンデミックの影響で会うことの叶わなくなった人や風景の記録映像をトレースして描かれたロトスコープアニメーション。 彼女は「彼」について話す。 は、モティーフの輪郭をなぞりながら記憶に思いを馳せる。 日常の風景、亡くした祖母のこと、震災のこと。





    2024年/8分/日本/原題:Daughter of Butades

監督のことば

本作品は、元々インスタレーションを無意識に、美術、アニメーション、ドキュメンタリーの境界を横断するものとして制作された。 そのため、まずはこのような実験的な作品をドキュメンタリーとして受け入れし上映してくれることに驚きながら、感謝の意を抱いてほしい。

監督プロフィール

  • 岩崎宏俊
  • 岩崎宏俊

    1981年茨城県生まれ。2019年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現領域博士課程を修了。博士(美術)。アニメーションの技法のひとつであるロトスコープに着目し、ロトスコープによる混淆する運動性や、記憶と創造による非出現性の探求を続けている。

  • 作品2

    火の島 上映時間22分

    1993 年、北海道南西沖地震が発生し、日本海に浮かぶ小さな島を巨大津波が襲った。あれから 31 年。島の歴史がまた1つ節目を迎えようとしていた──
    過疎化と少子高齢化の一途を辿るこの島に 7 年前、若い家族が移住してきた。島内随一の限界集落でゲストハウスを営む、外崎雄斗さん。利便性や効率を求めて都市部に人口が集中するこの時代に、なぜ離島での暮らしを選んだのか。その答えを探すために雄斗さんの島での暮らしを追った。

    2024年/22分/日本

監督のことば

奥尻島の歴史は縄文時代にまで遡るとされています。約 8000 年の長い歴史を島の豊かな自然が見守ってきました。しかし、100 年後、島に人はもう住んでいないかもしれません。大災害、少子高齢化、人口流出。変わらずあり続ける島の大自然とは裏腹に現代社会の波に翻弄される島の「今」。消えかかった島の命の灯火に私たち若い世代はどう向き合っていけば良いのか。島に生きる人々と共にその答えを探しました。

監督プロフィール

  • 中野美子
  • 中野美子

    2004 年生まれ、神奈川県出身。上智大学文学部新聞学科 3 年生。水島宏明教授のゼミに所属し、ドキュメンタリー制作を学ぶ。その他の短編ドキュメンタリー作品に、「今日もここから」(2023)、「まつぼっくりと牛丼」(2024)などがある。

  • 作品3

    あるけあるけ 浪江町、未来への歩み 上映時間30分

    東日本大震災から12年経ち、2023年に避難指示が全域で解除された福島県浪江町。この町の変化に葛藤を抱える人々がいる。浪江で飲食店を営むたかちゃん、生まれ育った浪江を離れ今も避難先で暮らしている石澤さん、そして関東から移住してきた千頭さん。2023年が終わり、2024年がやってくる年の変わり目に、3人の思いと人生が交錯する。初日の出や能登半島地震など、あの時しか撮影できなかった偶然の瞬間を数多くとらえたドキュメンタリー。

    2024年/30分/日本

監督のことば

震災がもたらしたのは物理的な被害だけではありません。地域のつながりや伝統など、人々の心と生活に大きな影響を及ぼし、震災から10年以上たった今でもその余波は続いている現状を今回目の当たりにしました。災害大国日本で起きてしまった災害に対してどう向き合えばいいのか。さまざまな葛藤を抱えながら、それでも力強く生きる浪江の人たちの姿を通して、すべての人にとって今後の心の支えとなるような作品になれば嬉しいです。

監督プロフィール

  • 会津万葉子、鈴木倫子、新村健一
  • 会津万葉子、鈴木倫子、新村健一

    慶應義塾大学文学部社会学専攻3年の3人。慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所でドキュメンタリー制作を始める。会津・鈴木の過去作「未来の子ども部屋~多様な性が紡ぐ家族のかたち~」はFFC学生ドキュメント映像祭をはじめ4つの映画祭で受賞歴がある。

  • 作品4

    誰か記者はいないのか? 烏賀陽がいる 上映時間36分

    主人公はフリージャーナリストの烏賀陽(うがや)弘道。福島原発事故の発生直後から現在まで継続的に取材する記者だ。「原発事故は核戦争に次ぐ核クライシス」というのが彼の持論だ。
    前半部分は、被災地での烏賀陽の活動に密着し、事故から10年以上経っても復興とは程遠い被災地の姿が描く。後半部分は、烏賀陽が専門家を訪ね「メルトダウンは防げたのではないか」という大胆な仮説を検証してゆく。ひとりの記者の執念を描く。

    2024年/36分/日本

監督のことば

民放キー局で長くドキュメンタリー制作等に携わってきた私は、定年を機に会社と距離をおき、インデペンデントな作品を手掛けたいと思った。
福島原発事故をめぐっては、震災直後は大手メディアもこぞって取材したが、やがて熱が冷めるとニュースでもめったに取り上げなくなった。こうした体質に、内部から違和感を持っていたひとりとして、その対極にいる記者に光を当て、ジャーナリズムのあり方を問いたかった。

監督プロフィール

  • 秋山浩之
  • 秋山浩之

    1987年、TBS入社。30年間、報道局に勤務し、『報道特集』ディレクター、同プロデューサーなどを務める。主な番組に『3・11大震災・記者たちの眼差し』(平成23年文化庁芸術祭優秀賞)『報道特集 秘密保護法』(2013年度ギャラクシー賞優秀賞)

  • 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
  • 芸術文化振興基金助成事業
  • エトノスシネマ